ライトノベル業界

2023年総括

例年のように本年の総括をしていこうかと思います。 世間的には…… 公的には先の日記に書いた通り、前年の問題が強化されてしまう一年となったようです。陰謀論者は政権に影響を与え、未熟で貧困な世界観を持つものが侵略や独裁を肯定するという傾向が世界的…

来年の予想と炎上忌避の空気

今年の業界動向 先の日記でも少しだけ書きましたが、昨今ではポリコレやフェミニズムを軸とした表現規制論が盛んになっています。パワハラの告発にも代表される権力勾配の暴力性についても周知されることとなってきました。それらがもたらすキャンセルカルチ…

『いちばんうしろの大魔王』について質問をもらいました

今回は自慢をさせていただきたく。昨今、自分でも怪しいと思っているのですが、私、小説家をしております。しかもキャリアは長め。そうなると過去作も積み重なっていくわけですが、娯楽小説など古いものはバンバン忘れられることが多い昨今、それらが振り返…

本年のまとめ

今年は本当に不活性というか、世間も自分も何も出来ずに終わった感があり、なんとも隔靴掻痒の年となりました。こういう年があったことを将来的にも忘れずにはいたいものです。 陰謀論には注意 なにより個人的に忘れてはいけないと思ったのは、「この年を境…

マイナージャンル小説が生き残るための試案

現在の小説業界の問題 以前から小説の売り上げの問題は様々に議論されてきました。これはライトノベルやWEB小説に限らず、小説、あるいは出版会全体の問題と受け止められていますが、一文で示せば「小説が金にならない」。これに尽きると思います。 この日記…

物語=バグ論

RTAにおけるバグ ゲームのプレイスタイルに、RTAというものがありまして、これはゲームスタートからクリアまでの時間を競う遊びです。Tの前にRがつく(Real Time)ことから分かる通り、ゲームを中断せずにクリアするまでのタイムを競うものですので、RPG等、…

WEB小説の技法について考えた結果、大河小説に行き着いた話

ここのところ以前よりも真面目にWEB小説というものに取り組んでいます。自分自身はあらゆる意味で流行を追うということはできなくなっているので、テーマや題材、段落分けなどは旧来のままで、技法についてWEB小説に向いているもの、向いていないものをはっ…

ライトノベルを批評するには

前回の日記への反響として「多くの人によるネットへの感想、プロによる批評、文学賞やランキングがないと小説は売れない」というものがありました。意見としてうなずくほかなく、だからこそコミュニティを築くことは大事だと思うところがあります。ですが、…

作家を続けること

かなりベテランの作家さんが「読者からの反応が無くなった。これは自分の小説が面白くなくなったということだから辞める」という趣旨の長文を書いて無期限の活動休止をされるということがありました。これには「そもそも感想って書きにくい」や「読者に感想…

さらに小説から考える

先日の話からさらに一歩踏み込んでみようと思います。「作家SNSのフォロワー数の多いことが出版条件となる是非」論争の根底にある考え方についてです。 それは多くの人が「売上以外にも小説の価値はある」と考えているということです。Twitterで上がった意見…

出版のために作家SNSのフォロワー数が必要、という話から

最近話題になったトピックに「編集者が作家のSNSフォロワー数を条件に書籍化を決めている」というものがありました。「本を出したいなら一万フォロワーくらいいないと」というところです。 この話への反応は「作家にも広報能力が必要になった」とか「広報は…

Brain Free : Paranoid Blues / 脳髄自由人の殺戮パラノイド・ブルース

新作はじめました! novelup.plus 今回はサスペンスとかスリラーと呼ばれるジャンル。これまで書いてきたものと大きく違うのは、自分自身が対象読者に入っていることです! いままでは商業作品を書いてきたことが多く、若年層に主に常にニーズを考えて企画を…

活動再開

novelup.plus 新作はじめました。軽~い作品です。更新もきまぐれ。

ここまでのまとめ

ここまでで、ある程度は小説というものについて考えられたかと思います。思弁的であろうとストーリーがなかろうと、主に具体性を持った物語であれば、多くの人が小説と呼んでいるものになるだろうということです。 そして、その具体性こそが我々を感動させる…

正確にドラマの背景を読み取る

多くの異論はあるでしょうが、小説はやはり基本的にはドラマを語ることに重きをおいています。ごく個人的なことを書くにしても、背後にあるのはキャラクターたちが舞台で躍動するドラマ性です。 ナボコフが文学講義において生徒たちに課題としたのは、ドラマ…

難しい小説?

前回からの続きになります。 s-mizuki.hatenablog.com 今回からは、小説で自分の「好き」を発見するには、どうしたらいいのか? です。 結論から言ってしまえば、数を読んでみてその中から共通項を発見する、という作業になるわけですが、小説というのも数を…

小説と内面の理解

『ノベルアップ+』という投稿サイトがはじまりました。 こちらで小説を書いております。 作品はこちら。 novelup.plus さて、先日このような日記をアップしましたが……。 s-mizuki.hatenablog.com ここで「作家がライフスタイルをまるごと提供することによっ…

ノベルアップ+にて連載開始!

小説投稿サイト『ノベルアップ+』にて新作小説をはじめました! 楽しいクトゥルフものでございます! TRPG好きな人もシナリオの一部に組み込んだりできる連作短編! 実話怪談や心霊映像ドキュメンタリーのテイストも入っております! 正気度を下げて健康に…

小説サイト乱立時代とこれから

小説投稿のサイトが増え、世間(というか主に運営側)で叫ばれることは「死にかけた出版業界の再生を」や「異世界転生ばかりではない小説の多様性を」等なのですが、それに全面的に賛成している人は少数であろうことは市場が証明しています。たとえ「ユーザ…

好きなことを選んでいるのに孤立してしまうこと

久しぶりの更新になってしまったのは、小説を書いていたからで、まぁ本業といえば本業なのですが、合間にまた文章を書いているのは、不思議な感覚があります。 それはそれとして、ネット配信の興行収入が映画館を抜いたそうで、隔世の感があります。劇場で見…

小説の読み そのさん

小説が読めたからといって何になるのか? ある程度読める人間に聞けば「それは趣味に過ぎない」という結論が驚くほど速く出てくることでしょう。実際、ここで紹介した小説の読みは、小説が構築する世界を鑑賞するというものですから、それができようとできま…

小説の読み そのに

前回からの続きになります。“教訓読み”ができた上で到達する次の段階の読み方、という話です。 実は、人間は日常会話や、メール等での文章コミュニケーションにおいて、ある程度までなら状況を優先して話を読み取っています。そこにかなりの違和感がない限り…

小説の読み そのいち

先だっての日記が少しヒット数が多かったので、気を良くして続きでも書くかと思い立ったものの、前回の話はいわば終着点みたいなものであり、そこから先はこれからずっと考えていかねばならないことだったと気づいた次第です。 そんなわけで、それより前段階…

小説を読むこと

news.denfaminicogamer.jp 多少突飛な話であるものの、思いついたので軽く書いておくかと思いたちました。 というのも上記記事を読んで、「これが本来の小説の読み方ではないか?」と思ったからなんですよ、これが。 一発で「そうか!」とは理解されないでし…

新年のご挨拶。そして、十分も経たずに分かる水城正太郎

あけましておめでとうございます。本年もよろしく。 特に何事もなく過ごしてしまった旧年、今年の抱負は少し情報発信をできるようにならないといかんよね、というところにしようかと思っております。 ある程度は人間というか人格がコンテンツ化しないと生き…

年末のご挨拶

歳の瀬がやってきた! というと“歳の瀬”という力士でもいるのかと思ってしまう方も多いと思いますが、なんにせよ年末なので、今年を総括しつつ昨今の考えでも記していこうかと思います。 本業である小説の方は、復活こそしたものの、いまだ世間への接続感が…

情報勾配を利用したビジネスモデルと創作の関係

情報勾配を利用して稼ぐビジネスモデルというのがあります。人々の間にどうしても存在してしまう情報リテラシーの差を悪用し、情報が足りない人を騙して金を吸い上げるモデルのことです。具体的には情報商材やセミナー商法、水素水などの疑似科学商品、やや…

宣伝についての悩み

とはいえ買ってください このように宣伝をしていて困るのは、自分が購入する側になったとき何を判断基準にしているかよく知っているため、「とにかく目につくために広告回数が多くなくてはいけない」とか「作家は書店員に積極的に話しかけていったほうがいい…

『道化か毒か錬金術』への道。その五(いちばんうしろの大魔王編)

『いちばんうしろの大魔王』は、「展開がいきなりすぎないか」「最後に前衛小説になるのは……」という非難もありましたが、どちらかといえば当初の予定通りであり、「少年漫画は最後は概念と戦う」という私の半ば冗談ともいえる見解を実現したものです。そも…

『道化か毒か錬金術』への道。その四(休養と自覚編)

そんなわけで休養となったわけですが、休養と前後して『十六夜聖域』『戦国コレクション』の仕事をしております。 『十六夜聖域』については「一ヶ月以内に続きを書けば増刷」というところを私が拒否する結果となってしまいました。この件については皆様にも…