2023年総括

 例年のように本年の総括をしていこうかと思います。

 

世間的には……

 公的には先の日記に書いた通り、前年の問題が強化されてしまう一年となったようです。陰謀論者は政権に影響を与え、未熟で貧困な世界観を持つものが侵略や独裁を肯定するという傾向が世界的に見られるようになってしまいました。

 それらの解決が難しいことの原因として、陰謀論者や過激な思想を非難する者が、それとは逆側に極端な思想を持つようになってしまうということが挙げられるでしょう。極左と極右が殴り合っているという印象にどうしてもなってしまう。異常な陰謀論を見過ごせないということは、結局は陰謀論を馬鹿にしているということも正当な批判ではないという印象に拍車をかけてしまうようです。

 ただ先行きが暗いというわけではないでしょう。一般の人々が政治に興味がないという風潮もありますが、前述のことを考えれば政治が嫌われているというより、陰謀論や過激な思想、未熟で貧困な世界観や攻撃的な姿勢が嫌われているわけで、むしろ健全な人々が多数派であることが可視化されているという安心感もあります。

 来年は表面的な討論でなく、正当な選挙で正常な候補者が選ばれ、彼らが陰謀論の雑音を無視できる環境が整えられることになると良いなぁ、と思っています。

 

出版界的には……

 私的には書き手としてよりは読者として大転換期になったことを強く感じています。というのも男女観や暴力観が大きく変わっており、それが比較的年齢が上で変化についていけないと思われがちな自分でも実感できるほどになってきたということがあります。具体的には十年も経っていない作品でも、セクハラ・パワハラに類するジョークがあるものに「うわっ、辛い」と感じるようになっています。同様の感想を見かけることも多いので、昔の作品に「古いなー」と感じるのとはまた別の変化が起こっていると感じています。

 人によっては「ポリコレ疲れ」などと言っていたりもしますし、単純に主役をマイノリティにすげ替えたりあえて不細工に撮影するなどには自分も反対なのですが、創作における平等と暴力的コミュニケーションへの思索という側面は一般の人々の間で確実に深まっています。過激化する平等運動とはほぼ無関係に転換が行われていることは非常に良いことでしょう。

 一方、書き手としてはそこに失敗すると不人気という形で即座に反映されてしまうという点で大いに悩ましいところです。これから何がスタンダードになるのかはわからないですので、次の成功者が時代を作っていくという当たり前のことを予測する以外のことはできそうにありません。

 いわゆるゼロ年代からオタク的な作品への一般層の嫌悪が減少し、今ではそのような絵柄や世界観を街で普通に見かけるまでに変化しましたが、当のゼロ年代作品は陳腐化を通り越して古い悪癖のように見えています。時代がさらに過ぎて再評価されるまでは、その年代の作品は肩身の狭い思いをしそうです。

 来年はなにか答えが見つかることを期待しつつ、今年のまとめにしようかと思います。