陰謀論に陥らないために

はじめに

 陰謀論の記事を書いていて思ったのは、やはり陰謀論者への嘲笑が多いということでした。必要なのは誰かが陰謀論に陥ってしまう前に踏みとどまる手助けをすることであり、自身も陰謀論に染まらないように生活するということです。「自分は絶対に陰謀論に染まらない」などという慢心には特に注意すべきでしょう。

 しかし、厄介なのは「陰謀論とは何か?」が定義しにくいことです。どうやらマルチ商法情報商材商法、カルト、スピリチュアルなどにハマりやすい人が陰謀論にも染まってしまう、という傾向はあるようで、陰謀論そのものもそれらと同様の傾向を持ちやすいことがわかっています。

 「陰謀論とは何か?」を解説してしまうと膨大なテキストが必要ですので、それは別の機会か様々な方の記事に頼るとして、ここでは「陰謀論とは思考法そのものである」という仮説を立てて検証していこうと思います。

 

思考とは何かを定義しておく

 思考とは、科学の基礎となる論理的思考に代表される通り、物事を体系化、無矛盾化して整理するような脳の働き、とここでは定義しておきます。これにより、思考は“悩むこと”や“願望”と分離されます。

 皆さんの中にはこの定義と同様に思考というものをとらえている方も多いことでしょう。それは「きちんと思考できれば陰謀論にはハマらない」と考えている人が多いことからもわかります。

 

実は生活において思考はする必要がない

 その上で、物事を体系化、無矛盾化することは、生活において必要ないこともまたわかります。仕事において強制的に思考させられることはあるものの、生活というレベルであれば、誰かが思考してくれていることに乗っかっていれば、つまりは社会を信頼していればやっていけます。電車のダイヤは誰かが考えていますし、映像作品も思考の賜物ですが享受する分には視聴者が考える必要はありません。

 

考えないことに罪悪感を持ったら危ない

 考えないことは悪ではないか? そう思わされることから陰謀論はスタートするのでしょう。陰謀論にハマる人々の常套句は「目覚めた・圧倒的成長があった」や「世界の仕組みについて勉強した」などです。実は思考している状態を“良いこと”や“人間として優れている状態”と思っていることになります。

 「世の中には優れている人がおり、その人達は思考して世界を把握している」という世界観に触れること、そしてそれを信じることこそが陰謀論の根幹なのではないでしょうか。そして、それは「自分は陰謀論にハマらない」と信じている人にとっても共通の世界観ではあるわけです。

 

体系化、無矛盾化するとは

 ではここで定義した“思考”を方法論として分解してみましょう。体系化とは主に類似したものの共通点を見出し、それを元に一括で処理したり、並べて解決したりすることです。着ている服を靴下やシャツなどに分類して整理するか、「その日に着るもの」として一括整理するか、などは思考したと言えるでしょう。

 そして無矛盾化とは、原因と結果が結びついている状態のことです。「ヤカンに水を入れて火にかけたら沸騰した」、という程度のことでも原因と結果はあります。「食べ過ぎたから太った。故にカロリーコントロールしなければならない」あたりまで来ると思考したと言えるでしょう。

 

思考の楽しみ

 思考することは、誰でも“仕事”では行っています。仕事の面白さは思考したことが実現することである、と言っても間違いだと思う人はそれほどいないのではないでしょうか? 思考し、実験し、正しかったかどうかの結果が返ってくる。そこに快楽があることは実感している人も多いはずです。

 思考が快楽であること。詳しくは思考し、実験し、正しかったかどうかの結果を確認することが楽しい、というのは重要です。陰謀論がもし思考することそのものであれば、それは楽しいからこそハマるものとなるからです。

 

魔術的思考とは

 しかし、陰謀論者はしばしば思慮が足りないように見えます。思考しているのだとすれば、何を思考しているのでしょうか? そこで参考になるのは、やはり歴史です。陰謀論と科学、哲学が一緒くたになっていた時代の思考は、しばしば魔術的思考と呼ばれる思考法を取っていました。

 「藁人形に憎い相手の髪の毛を入れて釘で打つ行為」は、「髪の毛によって敵対者と関連性を持った“人間に似た形状のもの”を傷つけることにより、敵対者に該当の傷を負わせる」という思考により成立するものです。これは、類似していることを見出すという面において“思考している”のです。

 陰謀論に多く見られる「日付の一致を見出す」ことや「語呂合わせを頻繁に行う」などは魔術的思考なのです。

 

思考が常態化していく

 もちろん魔術的思考の限界はすぐにわかります。科学的でないことを排除すれば良いだけです。陰謀論の厄介な点は、「何者かがメッセージを伝えるためにわざとそうしている」という考え方をしてしまうことにあります。そしてそれも思考している状態ではあるのです。

 さらに陰謀論では回答が頻繁に与えられます。往々にして思考したことに結果を提示してくれる人がいますし、自分で調べても答えらしきものは見いだせる。マルチ商法やサロンなどは、むしろ会員に思考することを常態化するように動いている。陰謀論者たちは思考していないのでなく、全力で思考する快楽を追い続けていると考えられます。

 

非日常的な思考は常態化しやすい

 これはカルト、ネット上での政治運動やある種のフェミニストの言動にも当てはまるように思います。彼らは何を見ても“思考”してしまう。思考できるターゲットを探し、その答え合わせを頻繁に行うようになってしまう。そしてどんな場合でも同じ回答を確認するようになってしまう。

 いずれも思考することと快楽が結びつき、同じ思考を繰り返そうとする心の動きに逆らえなくなっている状態にあるように見えます。これは一見するとまともに見えるMMT論者や哲学者、批評家にも共通しているようです。

 

目覚めた状態とは思考法が固着した状態

 陰謀論者が言う“目覚め”とは思考法が固着した状態を指す、とここでは言い切ってしまいましょう。

  • 自分が“解決”できる問題を常に探してしまう
  • 自分が納得するためだけに思考を展開してしまう
  • “問題がある人”を探して論破・揶揄しに行ってしまう
  • 何についても原因が同じであると考えてしまう

 などがあれば、あなたは“目覚めて”しまっているに違いありません。

 

固着した状態から脱するために

 ならば固着した状態から脱するためにどうしたらいいのでしょう? そのためには、複数の思考法を持ち、それに快楽を見出す以外ないのではないでしょうか? 二重思考、とは通常良くない意味に使われますが、それとは違う意味で、二重に思考する必要があると思います。

 複数の思考法があることを知り、それを日常に侵食させないこと。生活者的思考、仕事としての思考を持ち、それとは別の魔術的思考、哲学的、思考実験的な思考は“思考趣味”として楽しむこと。趣味における上達や達成に思考を使用することで、思考の快楽を消費する。それらが解決策として考えられるでしょう。

 

とはいえ陰謀論は面白くはある

 とはいえ、個人的には陰謀論、魔術、オカルトはまだ私の趣味のひとつではあります。これらについて知ることで“思考”がしやすくなることもあるでしょうから、気が向きましたら陰謀論の解説などしたいと思います。

 

現在展開中の小説です。陰謀論もかなり関わってきますので、よろしく。

novelup.plus

陰謀論の記録

本記述の概要

 これはトランプ支持者たちがTwitterで流したTweetを時系列で抜書し、陰謀論が拡散する様子を記憶しておくために書かれました。

 そこから導き出される結論としては、陰謀論に特有のワードと展開について知っておき、それに警戒すべきではないか、というものです。

 

予備知識

 2016年の大統領選よりこの陰謀論ははじまります。詳細はニュース記事に頼ります。

www.newsweekjapan.jp

 もしこれをフェイクニュースであり、マスコミの捏造であると考えるなら、本記述を最後まで読み、“目覚めた”状態をやめるべきであると言えます。

 最初に提示されたのは「米民主党がディープステートと呼ばれる一団に操られており、彼らが世界をコントロールしようとしている」という世界観です。

 これは過去に存在した様々な陰謀論と整合性を持たせるため、彼ら自身の手によりこのようにまとめられました。

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膨大ではあるがほぼ読む必要はない

 ここに登場するのは単語だけであり、その背後にある情報量は膨大ではありますが、図式としては単純です。「悪い宇宙人が古代から金持ちを支配し悪行を為した。そこに対抗する正義の勢力もいる」ということになります。

 そして「民主党を操るディープステート対トランプの戦いが現在行われている」というのが、現在盛り上がっている陰謀論なのです。

 

2021/01/10への流れ

2020 米大統領選挙

 ディープステート対トランプの戦いが行われているという陰謀論は当然ながら米大統領選挙で最高潮を迎えました。陰謀論者にとっての焦点は選挙そのものではなく、その集計システムです。ドミニオンという名をもつシステムを利用した不正が行われたというのです。

news.yahoo.co.jp

 これはやや陰謀論寄りのニュースです。日本のある程度大きなメディアでこのような扱いがなされたことは特筆すべきでしょう。ここではサーバーをめぐって銃撃戦が行われたという主張もあり、その後即座に否定されましたが、陰謀論の定石というべきか、否定の情報が陰謀論者たちに素直に聞き入れられたということは無いようです。

 そしてトランプが反撃に出るという噂が流れ始めます。

 

2021/01/06 米連邦議会議事堂占拠

 しかし、トランプの反撃というのは噂の域を出ませんでした。サーバーの押収が行われたとか、不正選挙の証拠を掴んだとか、バイデンや民主党有力議員の犯罪の記録が見つかったとか情報は流れましたが、何も起こりませんでした。

 ただひとつ現実になったのは、01/06の集会でした。

tocana.jp

 これは陰謀論側のソースですが、06日にデモを行うことが事前に知らされていたこと、それがトランプ側から出された情報であること、支持者以外の一般にはそれほど知られていないこと、などがわかります。

 トランプが陰謀論を利用して人々を扇動したという事実は重要でしょう。

 

2021/01/10 緊急放送システムの噂

 そしてトランプのTwitterが凍結され、弾劾訴追まで予定されるほどになった頃、Twitterに代わるメディアとしてトランプ支持者たちはSNSをPARLERへと移行します。そこでトランプの顧問弁護士であるというリンウッドが画像の発言を行います。

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PARLERでの発言

 それは日本にも伝わり、なぜか当日のうちに日本時間で01/10/23:00に緊急放送が行われる、というものに変化します。

※ 以下字体変化はTwitterより引用。但し個人特定や中傷が目的でないため改変アリ

 

****** *********さんより
日本時間2021年1月10日23時
トランプ大統領国民へメッセージ】
YouTuberで配信
【メッセージ後1時間で緊急放送システム】

 

 この発言はそれなりの数RTされますが、情報は変質していきます。そして、裏付けとしてリンウッド発言が訳されます。

 

2021/01/10/20:35
【要約しますと】
①トランプ氏の弁護士がSNSで発信した内容
②まもなく「緊急放送システム」でトランプ氏が声明を出す予定とのこと
③アップル社は緊急放送システムをも遮断する予定なのでアップデート機能をオフにして欲しい
④停電に備えて欲しい

 

 この停電というのはバチカンの停電のことである、と匂わせるリンウッド発言に呼応し、18時の段階でこの発言があります。

 

2021/01/10/18:03
先ほどの銃声が聞こえたバチカン、左側が今回の動画の姿だが、普段は右側のように見える。停電している。停電のなかで銃声が聞こえる。パキスタンは全土停電。

 

2021/01/10/18:50
アメリカ大統領選でドミニオンサーバーにアクセスしたのはバチカン所有の人工衛星である、と言われている。NATO軍(米軍)が証拠を押収するため、停電させた可能性もあるのではないでしょうか?

 

 20時の段階でTwitterのトレンドに「緊急放送システム」があがります。

 

2021/01/10/20:42
トレンドから突如消えたワード
「緊急放送システム」
順位が急激に落ちたとかでは無く、削除されたと思える。よほど都合が悪いのか?

 

2021/01/10/21:38
さっきまでトレンドに入っていたのに消されたのかなぁ?
投稿は結構あるしおかしくなぁ?い?

 

 トレンドは消えたり上がったりしますので、誤認なのですが、同様の発言は多数の人よりあがっています。

 

2021/01/10 古典陰謀論としての声

2021/01/10/20:56
緊急放送システムとは?
・アドレノクロム
・アドレナクロム
・ゴム人間
検索してみてください。
トランプ大統領が何と戦っているのか分かります。

 

 このTweetには注釈が必要でしょう。アドレノ(ナ)クロムとは人間のアドレナリンの酸化した化合物で、子供から採取したものが若返りの効果があると信じられ、ディープステートの有力者が児童から血を抜き取る根拠と考えられているものです。

 ゴム人間は人間の皮をかぶった権力者のことで、宇宙人等が正体を隠すためにそうしているのだという説です。いずれも古典的な陰謀論です。

 

2021/01/10/21:01
ここまで言われてもまだ気付かないバカはたくさんいるんだよな。メディアに踊らされてるのはどっちなんだよ。支配される側に甘んじてるだけで生きていける時代は終わってるのに。

 

2021/01/10/20:44
よくよく考えたら、明日って11日やーん! 9.11 , 3.11, 1.11..よく仕込まれてるなー!!

 

2021/01/10/22:23
緊急放送システムがトレンド上がってて、何それ?って思う方達へ。1日で理解することは厳しいと思うので、気にしなくて大丈夫だと思います。結局、事が起これば分かることなので。ただ、言えることは、これから数日で世界は劇的にいい方向に変わるってこと。なので、安心して頂ければと思います。

 

 これらも陰謀論に接した際に類型的な反応です。目覚めている側と支配される側という対比が見られます。数字の語呂合わせもかなりよく見られるものです。


2021/01/10 災害が起こるという期待

 一方、停電を大規模災害と捉える向きも出てきます。

 

2021/01/10/20:34
作りおきのおかずを作って、懐中電灯とロウソク確認して、一応の準備OK。もし無かったとしても、明日はこの作りおきのおかずでのんびり過ごそう。
でも、あるといいなぁ。

 

2021/01/10/20:25
まだ、どうやら生きてます。お米と水とならあるけれど、ガスヒータとかないから、停電しちゃったら、さむいね。でも、日本は備蓄電力とかあるんでないのかい? よくしらんが。

 

2021/01/10/21:34
万が一、停電したら家から出ない方がいいようですね

 

 微笑ましくはありますが、停電という情報が膨らみすぎて独り歩きしている様がわかります。人間はどうしても災害にワクワクしてしまう一面があるということなのでしょう。

 

2021/01/10 メディア不信

 もちろんアップル社についての発言も独り歩きします。

 

2021/01/10/21:03
アップル製品使ってる人は自動アップデートをオンにしてあるとそれを無効にするプログラムを入れられてトランプからのメッセージを見れない場合があるので自動アップデートはオフにしとくのがいいみたい。

 

2021/01/10/21:30
parlerでリンウッド弁護士をはじめ、TEAM_TRUMP等オフィシャルのアカウントをフォローし、彼らの発信をチェックしましょう。彼らの発言ならば間違いのない情報源です。要確認!!

 

2021/01/10/21:52
トランプさんは諦めないと思ってました! ところで緊急放送ってどうやったらみれるんだろう? 詳しい方教えてください。

 

2021/01/10/21:48
今何が一番心配かって、もし緊急放送がこっちでも流れるんだとしたら、この某国産スマホでちゃんと生放送で見れるのかっていう。生放送っていうのか知らんけど。

 

 よしんば緊急放送システムが存在したとして、それは緊急地震速報に類似した米国内で構成されている災害時用のシステムでしょうし、受信妨害があるとしてもはアップル製品限定では意味がありません。これらのTweetは何を想定して発言しているのか自分でもわかっていないでしょう。受信方法に素朴に疑問を持っている人に答えるTweetはありませんでした。

 そもそも元発言ではYouTube(元発言はYouTuberと誤字)での放送があり、その一時間後に緊急放送となっています。ここでも情報は変質しています。

 ただ根底にある大企業やメディアへの不信のみは強く感じることができることは付記しておく必要があるでしょう。

 

2021/01/10 混乱する人々

 これらの情報の錯綜に混乱する人々もいます。

 

2021/01/10/21:30
何が何だか分からなくなってきた。しっかりしなくては!

 

2021/01/10/21:31
バチカン停電の画像についてはライブカメラが回ってる時点おかしい。という意見が気がかりなのでデマなのか??? 情報が交錯し過ぎて情弱者にはついてけん!

 

2021/01/10/21:31
緊急放送システム のことですが、バチカン停電はデマです。
儀式で灯りが消えてたのを外国の方が停電と誤解してしまったようです。

 

2021/01/10/21:32
→ローマの停電は事実でした
もしかして中国の大規模停電も、アメリカや反中京の特殊部隊が基地や要人を制圧する為に起こした! 周キンペイは雲隠れしているしありえない話ではないかと思う。願望であるが、中京は内外から崩壊してほしい

 

2021/01/10/21:43
ベルリンもパリも停電!
これは全世界の主要都市で停電になるかも
絶対に絶対に今世界で何かが起きている!
陰謀論ではなく現実になる

 

 情報が錯綜、というより元情報が根拠薄弱であるがためにデマが膨らんでいるというのが正解かもしれません。しかし、さすがに全世界停電は事実確認が容易なため実害のあるデマにはなりませんでした。

 

2021/01/10/23:00 そしてそれは来なかった

 そして、該当の時間、それは起こりませんでした。引用Tweetが存在しないのは、陰謀論を信じた側の発言がピタリと止まったからです。「何も起きなかったじゃないか」とあざ笑うTweetのみ多数見られます。


2021/01/11 陰謀論は死なず

 しかし、ほとぼりが冷めると、再び同様のTweetが跋扈しはじめます。
 
2021/01/11
サイモンパークスさんのイギリス時間10日付けの更新動画をハローフロムさんが翻訳されてます。
発表はメインストリームメディア以外を通じて発表される。緊急放送システムが使われるのは最後の最後の手段。
https://youtu.be/**********
時間通りには発表されない。(情報戦の最中、それは当たり前かも)

 

2021/01/11
(警告重要警告)
主要メディアは見ないように。
緊急放送システムは"最後の最後の手段"。
HB・JBの映像はお"見せ出来ない危ないもの"ばかり。
法王の画像は"ホロ"の可能性。
その他詳細は上向き矢印にて各自ご確認願います。

 

2021/01/11
【世界緊急放送】
昨日の23時頃にトランプが世界緊急放送システムを使用しました。僕の知っている範囲内で語ります。
①ペ○○の逮捕
②世界規模の停電
バチカンパキスタン
日本も停電が起きる可能性がある。
③食料、水の確保
④ラジオ、懐中電灯を用意
⑤冬なので、防寒具やカイロの用意

 

 最後に米国のことであるのに、我が事のように檄を飛ばしている画像を貼っておきます。陰謀論とは、世界情勢を我が事のように感じるためのツールとして機能していることがわかります。

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冷静になってみると日本はほぼ無関係

 

我々はこれにどう向き合っていくべきなのか

 この文は陰謀論者を嘲笑するために書かれたのではありません。陰謀論がここまで力を持ってしまった時代は近年では存在しなかったと考え、ここにその危険性を告発する意味でまとめました。

 大国の政治の中核が陰謀論を信じ、いや、たとえ信じていなくともそれを利用した結果、その同盟国の一般人にまで影響は及ぶようになってしまいました。その陰謀論は過去から続く根深いものではありますが、そのパターンを知ることで十分に対処は可能なものだと信じています。

 今回のケースでも顕在化したように「期限を設けてそれを堺に世界の大変革が起こる」というメッセージはデマの類型的なパターンです。また「敵は陰謀をめぐらせている」という根拠のない発信も同様です。我々はそれらのパターンを知り、それに期待せぬようにしなければなりません。まして米国の連邦議会議事堂占拠のように行動を伴ってしまうものにはなおさら踊らされないようにせねばならないでしょう。

 宇宙人による支配という世界観を一笑に付すのであれば、この一連の陰謀論の根底がそれを根拠としていることを思い返し、一見すると事実とも思えるドミニオンのサーバーをめぐる一連の噂も一笑に付すべし、ということになるでしょう。噂の根拠を追っていった結果、イルミナティバチカンなどの単語が登場した場合も同じです。陰謀論に踊らされぬためには、それらの単語や、今回のケースについて記憶しておく必要があるということになります。

 私はオカルトを題材とした娯楽小説でデビューし、その後もオカルト趣味を持ち続けてきましたが、その趣味には陰謀論を信じているフリをして弄ぶという露悪的な側面があります。ですが、そのスタンスもこういった現実を前にしては控えなければならなくなってきました。

 いつまでたってもこういう陰謀論はなくならない、と諦める気持ちもあるのですが、時代というのは急転換するのでなく、ゆっくりと変わるものです。陰謀論者のように一気に“目覚める”のでなく、少しずつ馬鹿な考えを無くしていくように務めなければならないということなのでしょう。

 

付記

 種々の引用については削除依頼があれば応じます。

本年のまとめ

 今年は本当に不活性というか、世間も自分も何も出来ずに終わった感があり、なんとも隔靴掻痒の年となりました。こういう年があったことを将来的にも忘れずにはいたいものです。

 

陰謀論には注意

 なにより個人的に忘れてはいけないと思ったのは、「この年を境に“オカルト遊び”をある程度限定的なものに留めなければならない」、という教訓でしょう。テレビでディープ・ステートの名が語られるまではいいのですが、本気で信じている人々が増加しているのを見てしまうと、冗談でも記述するのを控えなければいけない、と思います。

 そもそも“オカルト遊び”は何をするにも「信じているフリ」が重要なわけで、表立って否定せず、センスの良い人にだけ真意がわかるようにするプラクティカル・ジョークです。その意味でも、過激な米国共和党支持者たちの言説をそのままテレビで扱っていた某番組の姿勢は非常に危険なのではないでしょうか。信じるか信じないかは当人次第と言いながら、冗談の余地がなくタレントをメンターのごとくに崇めかねない演出までなされていました。

 それでも全体として捨てねばならぬ思想が判明したことは喜ぶべきことでしょう。現代の陰謀論は実害を持って我々の前に出現したとも言えます。選挙における陰謀論は内戦に直結しますし、インフラへの信用の失墜は生活基盤そのものを脅かします。それらのすぐに危険とわかる陰謀論も、“イルミナティカード遊び”等の実害のないものと地続きであることが示されたわけです。日本においても、オカルトで遊んでいたつもりのあなたの隣人が富士山消失を訴え、5G通信を恐れて自殺するかもしれないというところまで来ていると考えるべきでしょう。

 いわゆるオタク趣味の人々は、そういう陰謀論から遠い人種と思われていましたが、米国では積極的にそういう趣味の人々がハマっていますし、国内でも某掲示板の政治板がそのような人々の巣窟になってしまいました。遠い国の話ではないと考える必要があり、これらの動きには注意していく必要があるはずです。

 

オタク趣味の転換点

 オタク趣味といえば、露骨にそちらの香りを持つ『鬼滅の刃』が記録的興行収入を叩き出し、社会現象となりました。これをもってSF的に言えば「オタクの浸透と拡散」が完了したと言えるでしょう。これからは違和感もさほどなくオタク趣味のイラストが街の風景に溶け込むわけです。美少女イラストの看板を見てしまったときの気恥ずかしさはもはや過去のものです。

 小説においてもライトノベルと一般小説のパッケージングに違いは見つけにくくなってきています。内容的にもファンタジー色の強さは作品固有のパラメーターに過ぎず、大きな括りでは違いを見分けるための指標にはならないでしょう。

 これを浸透と拡散と称したのは、SFの退潮と相似形となるであろうからです。ゲームもアニメもなんであれとりあえず見る、というオタクスタイルは消え去り、個々人は絵柄やストーリーによって細分化されたコミュニティを探して安住し、そこから出てこなくなるというのが主流となるでしょう。それが一般的なカルチャーの消費スタイルとなれば、コアなオタクは過去のヒット作に拘泥し続けるしかなくなり、それらへのオマージュを捧げた作品のみが「ハードオタク」などと呼称されることになっていく未来も予想できます。

 鬼滅のヒットで証明されたのは、オタクは作品こそ発信こそできるものの、ヒットを生み出すための宣教師にはなれない、という事実でした。コアな人々がどう作品を紹介しようとも、ヒットを作り出すのは趣味のネットワークでなく、生活のネットワークでつながる人々だったという分析は可能でしょう。

 

これからの展望

 ことカルチャー、コンテンツに関しては、「マーケティングではキャズムを越えられない」というべきでしょう。我々作家の生き残りは困難になりますが、細分化したスタイルを貫徹することこそが、大ヒットにも、作品継続のためのファン獲得にも繋がるのではないでしょうか。より良い未来は中々見えませんが、ファンの増加と構造改革のために努力していくしかないようです。

 

来年度よろしく

 そんなわけで来年もよろしくお願いいたします。参加させていただいているアンソロジー・シリーズと何かが出るはずです。現在心からの趣味で書いている作品はこちら。青年誌的なバイオレンスのあるサスペンス作品となっております。

 

novelup.plus

 

 

 

 来年が良い年でありますように、と切実に祈ります。

『クルセイダーズ』

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他言語版です。

 去年ツイッターで話題になった作品です。テーマはタイトル通り十字軍! 昨今の情勢においてこのテーマとは思い切ったなぁ、と思っていると、マニュアルの最初に「差別的な意図はなく、十字軍の再現をする目的も無く……云々」という意味合いの長文が書かれております。単に中世の騎士団フレーバーが欲しかったわけですね。確かに十字軍の歴史はまったく無視されており、聖地の奪取、防衛などにも意味は持たされておらず、プレイヤーが使用できる騎士団は時代も場所もまちまちのものとなっております。騎士団の特徴はキャラクターゲーム的に能力が設定されており、純粋なゲーム性を追求されて制作されたものだとよくわかります。

 とはいえこのフレーバー、思いの外ゲーム的にも面白い扱いをされており、ゲームの終了条件である「全プレイヤーが得た影響力ポイントが一定を上回ったターン」は「騎士団の影響力が増えすぎたためフィリップ王がこれを粛清する」となっております。修道騎士団の末路! なお「聖戦」で倒すとポイントに化けてくれる異民族はプロイセン、スラブ、サラセンとなっており、いろいろスレスレです。

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個人ボード。綺麗にはまるようになっております。

 本ゲームの特色は行動がマンカラ系のマーカー移動によってなされることです。「移動」「聖戦」など行動が割り振られた三角形のタイルが組み合わされた六角形のウェッジと呼ばれるダイヤル上に置かれたマーカーが行動力を示しています。タイルを選び、そのマーカー分の行動力を行使した後、マーカーは時計回りに隣接するタイルに一個ずつ置かれていくのです。これにより、同じ行動を連続することはやりにくくなっており、かつ数ターン先の行動を予測してマーカーを配置しなくてはならないというのが面白さとなっております。

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ゲームが進んだ際のボード。

 ゲームは三人で200、四人で260点がなくなれば終了となるので、70点くらいが最終ターン目前までに獲得しておくべき目標ラインとなります。得点方法は異民族の討伐、及び行動「影響」があり、特徴的なのはこの「影響」行動です。タイルに乗っているマーカー+各種ボーナス分のポイントを直接ゲットできるのです! 布教や政治活動ってやつですな。異民族は最終的に10点になってくれる(ただし戦闘力も10)のですが、討伐には同じだけの戦闘力(マーカー数+徴兵ボーナス)を用意しなければならず、数ターンを犠牲にマーカーを動かさなくてはなりません。が、「影響」ならたまたま集まってしまったマーカーを動かしつつポイントに変換できます。

 まだ一回しかプレイしていませんが、得点方法には大きくみっつの方針があるようです。それは「異民族討伐」「建築物コンプリート」「影響マーカー」。陣取りゲームの要素も強いので、重視している方針が他プレイヤーと重複すると具合が良くない模様です。異民族も建築物もボード上のマスの数に制限がある上に、騎士団同士は戦闘できずすべてが早いもの勝ちであることがジレンマとなります。すべてをバランス良く行って行くことも大事なのですが、累積ボーナスとマーカーの偏りが終盤に集中するため、ポイント獲得が加速度的になることを考慮すれば、終りが見えた瞬間に照準を合わせるプレイが重要になるでしょう。全体獲得ポイントが終了ラインを越えても最終ターンで点数の獲得は可能なので、ここで逆転するバランスにゲーム全体が調整されています。

 ざっと概要と攻略について触れましたが、本作のなにより良いところは、ルールも簡単で、一時間程度で終わる中量級ゲームであるという点でしょう。セットアップこそ大変で重量級を感じさせますが、各ターンで単純な一手しか行えないため、ダウンタイムも無くサクサクとゲームが進みます。さらにやりこみ要素も見逃せません。ウェッジは全プレイヤー共通であるためランダム性もなく、行動順が同じであれば何度でもマーカーの移動は再現できます。ボードの配置こそランダムですが、記録さえしておけば、どこで間違えたのか確認することが可能です。そこに騎士団選択も加わります。騎士団の独自ルールのほとんどはマーカーの数や移動に特殊性を持たせるものなので、「この順番でこの行動をこのマーカー数で可能なのはこの騎士団だけ」というキャラクター性もあります。

 このように本作は非常にオススメ。手に入れにくいことはあるかもしれませんので、感染に気をつけて取り扱いのあるボードゲームカフェなども視野に入れてはいかがかと思います。

『ダイナマイトナース』旧版

 久々のゲームプレイ日記です。今回のプレイは『ダイナマイトナース』旧版。中古価格が急騰しており、貴重なゲームとなっております。復刻でなく続編のリターンズで2011年作品ですので、本作、そして拡張続編の2はどちらも若者は生まれていないくらいの古さです。

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このサイズのボックスカードゲームが流行った時代があったのだ

 学校に持っていきやすいサイズと萌え絵という言葉はないが概念が育まれつつあった頃の高校生オタクグループに大ヒットした作品です。この頃は女子キャラの属性が言語化されておらず、イラストレーターと少年たちがイラストひとつで煩悩を共有するというオタク総超能力者みたいな状態でした。二次元に飢えてた時代でしたなぁ。

 ゲーム内容は患者カードを相手に押し付け、ナースカードで治療できなかったら病状悪化、死亡者が累積したらゲーム脱落という最初から不謹慎なものとして作られています。時代だねぇ。もちろん当時のものなのでバランスは悪く、最初はまんべんなく全プレイヤーに患者を渡すものの、少しでもミスって他よりも患者が多いプレイヤーに全員が集中攻撃するというプレイにしかなりません。戦略性ナシ!

 しかしながら雰囲気は楽しく、いや、正確には当時のオタクたちには楽しく、現代では不謹慎を笑いにすることへの耐性やらセンスやらが問われる微妙な雰囲気が流れます。でも当時を思い出せる人は童心に帰れるはず。まぁ若手の現代アナログゲーマーにとっては、我々が子供の頃、父親からビー玉やメンコの遊び方を伝授されたような感覚だろうけど!

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そううつ病という現代的でない表記が


 ちなみに写真の「奇跡の生還」にはマンモスラッピーという表記が。文化研究的観点からも漏れてそうな語です。ガチ目なアウトローがなぜかぶっとんだキャラ性でアイドルやってて世間にバレていなかったんだからすげぇ時代だったな。

 というわけでオススメしようにも手に入らないゲームの紹介というか、単なる過去話でした。

マイナージャンル小説が生き残るための試案

現在の小説業界の問題

 以前から小説の売り上げの問題は様々に議論されてきました。これはライトノベルやWEB小説に限らず、小説、あるいは出版会全体の問題と受け止められていますが、一文で示せば「小説が金にならない」。これに尽きると思います。

 この日記で書いてきた種々の問題も、売り上げの不足から派生したものに過ぎません。作家のSNSをどう扱うかや、ジャンル分類、コニュニティ維持等の問題も根本的には全コンテンツが売れていれば解決するものと考えられます。

 売れれば解決するというのは乱暴かと思われるでしょうが、過去の極端な例としては文学不良債権論争、というものがありました。要約すれば「純文学、文芸誌は単体で赤字であり漫画の利益で補填されている」という指摘があり、紛糾したのです。単体で売り上げが足りない小説は維持されるべきなのか? 継続すべきならばどうやって? という問題は昔から根深く、問題の中核にあったのです。

 それは文化的な後退が起こることに対する恐怖によるものでしょう。先に書いたバグ理論でも語ったように、人間の思考パターンのリストを保持し、その変化を追い続けないと、個人にとっては自らの精神構造が理解できないことになりますし、社会全体にとっては共同体を維持していくための理念が存在しないことになる、そういう恐怖です。そして、文化的な後退を招かないようにする努力は、売れないものは消滅してしまう資本主義とは非常に相性が悪いのです。

 これは本来は売り上げとは無関係に存在できるはずのWEB小説においても同様でした。小説が無数にあるため読むコストが高いことから、検索性が高い小説にのみ読者が集中するのです。さらには上位が書籍化、コミカライズされることで資本主義システムがより加速するという状況が生まれています。それを回避すべく編み出された個人ごとに嗜好を絞った検索のカスタマイズも、かえって先鋭化と分断を招いてしまうことも以前に書いた通りです。

 

作家が売っているのはコンテンツではない

 これらの問題について考えた結果、原点である「小説が金にならない」という問題の選定の仕方が間違っていることに気づきました。そして、それへの対抗策が既存の構造、あるいは資本主義的構造から外に出ることに集中していたことも間違いだったのではないでしょうか? 端的に言えば、作家は「売るものを間違っていた」のです。

 小説でなくIPを売るというのも別のものを売るという発想ではありますが、メディアミックスは新しい発想ではないですし、既存の構造の亜流であるばかりか、問題を大きくしているに過ぎません。そもそも作家は読書体験を売っているのであり、それを回収する手段がコンテンツビジネス、多くは書籍販売に偏っていたというだけのことなのです。

 そのビジネスが成り立たなくなってきたのは前述の通りです。読者からすればコンテンツは(見かけ上)無料になってしまいました。クオリティの劣ることのないものがWEBで無限に供給されているのですから、購入動機はイラストやロゴまで含むパッケージ、アイテムとしての書籍と、ページをめくる体験、あとは作家の応援というところでしょう。潜在的に顧客を失っているばかりか、パッケージングが難しい小説はそもそも金銭化できないということになってしまいました。

 

では作家が売るものは

 そこで提唱したいのは「作家が執筆活動全体をスポンサーに売る」ことです。これまでも純文学は作家の人生相談や日記などを売ってきましたが、それを拡張しようということではありません。ここで言っているのは、作家の活動とイメージ全体を売ること。つまりプロスポーツ選手のように年間の専属契約を年俸制で行ってみてはどうか、という提案です。

 雑誌等での作家の専属契約はこれまでもありましたが、主に排他的な目的で交わされる少額のものでした。ここで提唱する“プロ作家”とは、企業やチームに年俸で雇われ、その期間、雇用主のイメージを上げるために執筆活動を続ける、というものです。

 いわゆる編プロ、IPコンテンツ事業者との決定的な違いは、作家に求められることが小説や日記の内容やイメージであり、コンテンツ売り上げとは無関係であることです。もちろん出版、映像化などがあり有料コンテンツが出た場合、売り上げは作家でなく雇用主に渡されますが、それにより書籍化しないものの優秀なコンテンツを守ることができるわけです。この場合の“優秀”というのが雇用主の主観になるのは当然ですが、いわゆる“ジャンル”というのを守ることを目標に掲げるチームなら、雇用主が直接出版事業を行うよりも少額で特定ジャンルを守ることが可能でしょう。

 ユーザーによる定額制のスポンサード、あるいはオンラインサロンとも異なるのは、作家の活動をクローズドにする必要がないことです。これにより作家の暴走や、意見の先鋭化、そもそも詐欺等を防ぐことができます。

 作家にとっても固定の収入は作風を安定させてくれますし、現状でも出版作家にはSNS等でのクリーンな発言が出版部数を問わず厳しく求められ続けていますので、公表している活動全体を売ることに抵抗はないでしょう。

 

この契約方式の問題

 この案で問題になるのは、プロスポーツと同様、チームが集めるスポンサー料金で運営しなければならないため、文化事業であることを理解しているスポンサーが広告効果を認めて出資してくれることを期待するしかない、という点でしょう。小説の未来を憂う企業が増えてくれなければ実現そのものが不可能です。

 さらに小説サイトは企業の宣伝として小説を書くことを認めていません。これはマルチ商法流入を避けるための措置ですが、健全な企業の流入も拒んでいます。そもそも健全な企業とそうでない企業を見分けることは難しいのです。

 もちろんノンジャンルでチームを組んでしまうと高収入作家にのみ重圧がかかり作家感で互恵的な関係が築けないという旧来の業界情勢と変化がなくなってしまうというのも考えられることです。そこがあくまで雇用主の良心に委ねられるというのは最大の問題となるでしょう。

 

それでも提案する理由

 それでもこの案に利点はあると考えています。出版業界の規模縮小は仕方ないとしても小説やジャンルそのものの消失は望んでいない人が多いと信じていますし、小説の熱心なファンはこれからでも作り出せると確信しています。

 加えて作家の“プロ化”は、小説そのものに広告を投じるより、作家やジャンルに投資できるという点、年俸が他の手段による広告出稿よりも高額にはならないであろう点も利点になるかと思います。

 最後に、これは問題点にもなり得ますが、作家による思想、言論の表面化、チーム化により発生する小説論争、現状では左右両極に先鋭化している思想シーンの多様化、並びに少数意見のすくい上げも可能になるのではないでしょうか。

 

ただし試案にすぎない

 この案が既存の出版構造やWEB小説の現状を壊すことはありませんが、即座に実現という未来も中々難しくはあるでしょう。まだまだ私が考えついていない問題点もあることでしょうし、私自身がもし、私財を投じてチームを作れと言われたら躊躇する程度の覚悟で提案しています。まずは試案まで、というところでしょうか。

 しかし、今後、純文学やマイナージャンル、さらには電子化していく小説を守ることができる方法として書いてみました。