『クルセイダーズ』

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他言語版です。

 去年ツイッターで話題になった作品です。テーマはタイトル通り十字軍! 昨今の情勢においてこのテーマとは思い切ったなぁ、と思っていると、マニュアルの最初に「差別的な意図はなく、十字軍の再現をする目的も無く……云々」という意味合いの長文が書かれております。単に中世の騎士団フレーバーが欲しかったわけですね。確かに十字軍の歴史はまったく無視されており、聖地の奪取、防衛などにも意味は持たされておらず、プレイヤーが使用できる騎士団は時代も場所もまちまちのものとなっております。騎士団の特徴はキャラクターゲーム的に能力が設定されており、純粋なゲーム性を追求されて制作されたものだとよくわかります。

 とはいえこのフレーバー、思いの外ゲーム的にも面白い扱いをされており、ゲームの終了条件である「全プレイヤーが得た影響力ポイントが一定を上回ったターン」は「騎士団の影響力が増えすぎたためフィリップ王がこれを粛清する」となっております。修道騎士団の末路! なお「聖戦」で倒すとポイントに化けてくれる異民族はプロイセン、スラブ、サラセンとなっており、いろいろスレスレです。

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個人ボード。綺麗にはまるようになっております。

 本ゲームの特色は行動がマンカラ系のマーカー移動によってなされることです。「移動」「聖戦」など行動が割り振られた三角形のタイルが組み合わされた六角形のウェッジと呼ばれるダイヤル上に置かれたマーカーが行動力を示しています。タイルを選び、そのマーカー分の行動力を行使した後、マーカーは時計回りに隣接するタイルに一個ずつ置かれていくのです。これにより、同じ行動を連続することはやりにくくなっており、かつ数ターン先の行動を予測してマーカーを配置しなくてはならないというのが面白さとなっております。

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ゲームが進んだ際のボード。

 ゲームは三人で200、四人で260点がなくなれば終了となるので、70点くらいが最終ターン目前までに獲得しておくべき目標ラインとなります。得点方法は異民族の討伐、及び行動「影響」があり、特徴的なのはこの「影響」行動です。タイルに乗っているマーカー+各種ボーナス分のポイントを直接ゲットできるのです! 布教や政治活動ってやつですな。異民族は最終的に10点になってくれる(ただし戦闘力も10)のですが、討伐には同じだけの戦闘力(マーカー数+徴兵ボーナス)を用意しなければならず、数ターンを犠牲にマーカーを動かさなくてはなりません。が、「影響」ならたまたま集まってしまったマーカーを動かしつつポイントに変換できます。

 まだ一回しかプレイしていませんが、得点方法には大きくみっつの方針があるようです。それは「異民族討伐」「建築物コンプリート」「影響マーカー」。陣取りゲームの要素も強いので、重視している方針が他プレイヤーと重複すると具合が良くない模様です。異民族も建築物もボード上のマスの数に制限がある上に、騎士団同士は戦闘できずすべてが早いもの勝ちであることがジレンマとなります。すべてをバランス良く行って行くことも大事なのですが、累積ボーナスとマーカーの偏りが終盤に集中するため、ポイント獲得が加速度的になることを考慮すれば、終りが見えた瞬間に照準を合わせるプレイが重要になるでしょう。全体獲得ポイントが終了ラインを越えても最終ターンで点数の獲得は可能なので、ここで逆転するバランスにゲーム全体が調整されています。

 ざっと概要と攻略について触れましたが、本作のなにより良いところは、ルールも簡単で、一時間程度で終わる中量級ゲームであるという点でしょう。セットアップこそ大変で重量級を感じさせますが、各ターンで単純な一手しか行えないため、ダウンタイムも無くサクサクとゲームが進みます。さらにやりこみ要素も見逃せません。ウェッジは全プレイヤー共通であるためランダム性もなく、行動順が同じであれば何度でもマーカーの移動は再現できます。ボードの配置こそランダムですが、記録さえしておけば、どこで間違えたのか確認することが可能です。そこに騎士団選択も加わります。騎士団の独自ルールのほとんどはマーカーの数や移動に特殊性を持たせるものなので、「この順番でこの行動をこのマーカー数で可能なのはこの騎士団だけ」というキャラクター性もあります。

 このように本作は非常にオススメ。手に入れにくいことはあるかもしれませんので、感染に気をつけて取り扱いのあるボードゲームカフェなども視野に入れてはいかがかと思います。