『ブリタニア』をプレイ

こちらマップです。f:id:S_Mizuki:20180902131601j:plain

 今回プレイしたのは『ブリタニア』。別版も出ているようですが元祖のアバロンヒル版です1986年のゲーム。ずいぶん昔の制作なのですが、意外に古さは感じませんでした。
 
 タイトルとマップからわかるように、ブリテン島が舞台。ローマの侵攻からノルマン・コンクエストまでの歴史を辿っていく(といいつつ民族同士が殺し合う)ものになっております。
 
 特色はプレイヤーの担当する民族がひとつではないこと。時代を経て消滅、あるいは登場する民族があるため、一時代に支配的だった民族の担当者はその他の時代は傍流となってしまった民族を同時に担当するという具合。勝利条件はポイント制ですが、ターン毎に計算するため、その経過はかなり凸凹。民族のポイントでなくプレイヤーが獲得したポイントは最終的にバランスがとれている、という構造となっています。
 『スモールワールド』に似てるかも、と思った方はそのとおりで、このシステムを採用したゲームを時代をさかのぼって列挙すると『スモールワールド』『ヴィンチ』『ヒストリー・オブ・ザ・ワールド』『マハラジャ』『ブリタニア』となっております。
 
 『ブリタニア』のプレイ自体は簡単。エリアにコマを進めて土地を確保、コマ同士がぶつかるとダイスを振って戦闘、負けた側のコマが消えるというだけ! ただし民族ごとに指定されたエリアでポイントが入るため、自然と史実通りの支配地域にならざるを得ないという構造になっています。

侵攻していくローマ!f:id:S_Mizuki:20180902131717j:plain

 民族ごとの特殊ルールが多く、例えばローマ人は戦闘が強いものの序盤で消え去ります。ゲルマン民族大移動に対応するため本国に帰るのです! そしてデーン人に追い出されたアングル人、サクソン人、ジュート人が上陸してくるという具合。ゲーム的なバランスより史実優先らしいのですが、ブリテンの歴史と地理に詳しくないとどのくらい正確なのかはよくわかりません! 当然、我々は詳しくない方なので「どういうこと……」となるシーンが多々ありました。アイルランド人とダブリナーズ(アイルランドのデーン人)がそれぞれ別のプレイヤー担当として散発的に攻めてきたり、ヴァイキングがデーン人、ノルウェー人、ノース人に分かれていたりと、実際の侵攻がそうだったのか、ゲームの都合なのか調べてみたくなるところではあります。

ピンぼけアーサー。なお瀕死。f:id:S_Mizuki:20180902131620j:plain

 なお日本で女体化されたり欧州で神格化されているアーサー王はローマン・ブリトン人(ローマ化されたケルト人)として登場。戦闘で無双した挙げ句、あっさりと滅びます。このゲーム、民族同化などルールにない! すべて優勢な民族に吸収されて滅ぶのです。
 
 このように決められた通りに進行していくため、退屈感があるのではないかと思われるこのゲームですが、まるでそんなことはなく、そこが独特のプレイ感につながっています。決められた通りにプレイしないと勝ちにつながらないのですが、その余剰として行った(あるいは行わなかった)ちょっとしたことで後の展開が大きく変わることがあるようで、そこが実に歴史を感じさせてくれます。ローマ人がウェールズ人をもっと追い込んだなら、とか、サクソン人がノルマン人に抵抗できたなら、とか諸々あることは初回プレイでも感じられました。
 
 一方で「古いゲームだな」と感じてしまったのは、戦闘解決がダイスであること。基本6が出たら殺せるみたいなアバウトさなので、頻繁に生じる一対一戦闘が理不尽な運に左右されます。今回のゲームではアイルランド人がほぼ何もできずに終了する(そういうバランス設定ではあるのですが)とか相手の二倍以上の余剰人口が出ないと隣国に攻めるのが運ゲー(こちらはバランス的に攻めなければならない)などがありました。
 とはいえ、大きな不満点はそのくらいで、強いて言えば民族ごとの特別ルールが多く間違えやすい、というくらいですが、そこも味なので、不満は少ない良作といえるでしょう。
 
 ちなみに、このタイプのゲームでは『ヴィンチ』と『スモールワールド』では戦闘が改善されていますが、そちらは歴史再現感がないため、本作は代替物のない面白さを持っていると言えるでしょう。
 
 なお『スモールワールド』は、このタイプのゲームの決定版で、戦闘が運になる部分が非常に少ないのですが、そのため実は自ターン開始時には「完全解がある!」ゲームなのです。簡単な例としては「侵入したそのターンに次プレイヤーから絶対に滅ぼされる種族が出てしまう(そのため滅ぼされる種族を選ぶのはダメなプレイ)」などが起こり得るため、上手なプレイヤーが勝つゲームとなっています。
 
 時代が進んだ結果、ガチプレイに至ってしまうというのは皮肉というか、なんというか。このように『ブリタニア』は、対立プレイでありながら協力プレイ、とでもいうべき不思議なテイストの和気藹々と楽しめる良作でした。わざわざ古いゲームをするだけの価値はあるでしょう。おすすめです。