『道化か毒か錬金術』への道。その二(病状悪化編)

前回は『いちばんうしろの大魔王』を執筆しはじめたところまででした。時代の要請をテキトーに受け止めつつ、少年漫画っぽい売れるものを、という縛りで企画しました。
今だから語れる裏話という意味では、“将来魔王になると予言される”というネタは今も昔も一般的なものですが、自分は竹本泉先生の漫画に“未来の管理社会で公務員適性が高いと診断された真面目な少年がコンピュータをハッキングしたら真の適性が宇宙海賊だったのに隠蔽されていたということがわかったので宇宙海賊になった”というのがあり、それが元です。


で、幸い、そこそこ売れて楽しく執筆も続いたわけですが、体力の不足と睡眠時間によりスケジュールの維持が難しくなり、しわ寄せが精神でなく体力に響いていきます。鬱病への理解として「精神が疲れていくことが原因で、その兆候も精神にあらわれる」というのがあると思いますが、身体にあらわれる場合の方が多いと私は感じます。強烈な肩こりとそれによる頭痛、そこからの吐き気がずっと続き、眠るとそれがさらに強化されます(眠ると起きているときより歯を食いしばっているからです!)。もみほぐしたり湿布で治療しようとすると、血流が激しくなり頭痛と吐き気がよりひどくなります。それでも精神は前向きと自分では感じています。小説が書きたくないわけではないのですから。

 

実際には、精神にも負担はかかっていました。何をしゃらくさいと言われるとは思いますが、自分は本質的には「売れたくない!」作家です。商業である以上、そうは言っていられないし、本格的に売れないと書く意味も意欲も消失してしまうのだから間違った志向なのですが、売れると起きてくる弊害が自分には重荷でした。
売れると起きる弊害とは? それは「ずっと同じポジションを求められる」ことと「本気で書いた別作品の評価が下がる」ことです。特殊な人間しか興味が持てないでしょうから、あまり説明はしませんが、私は後に他のレーベルからお仕事の話をいただき、実際に着手したにもかかわらず「売れたくないからしません」という大変に失礼な断り方をしてしまいました。病んでますね。

 

自分も大方の鬱病の人と同じく、精神が落ち込んでいると自覚できなかったため、通院することなく仕事を続け、結果として不定期に蕁麻疹が身体の各部に転移していく、という現象に襲われます。さらに強烈な胃痛。不眠からの過眠。これらが不定期に、そして隙間なくやってきます。
面白いところでは、これは治療後に消えたことで判明したのですが、「ゴキブリ、蜘蛛を過剰に恐れる!」というのも症状でした。自分でも謎なのですし、もともと&現在も嫌いなのですが、かつてはハエトリグモでも重篤な不調に陥っていました。今では部屋に出現するハエトリグモを愛でて共存しています。心当たりのある方、薬で治るかもしれません。

 

ラクノフォビアはともかく、蕁麻疹で皮膚科、胃痛で胃カメラ、と診断を受けるわけですが、異常はまったくありませんでした。最終的には蕁麻疹が目のまぶた裏に転移し、コンタクトレンズ三枚分くらいの目やにが目を塞ぎ、目が開けられずに強烈なかゆみが襲ってきますが、これも眼科ではアレルギー性結膜炎の診断。もはやどうにもならなくなってきたのですが、まだこれでも病状は最高潮ではありません……。


というところで、次回。ライトノベル関連で質問あればTwitterにお願いします。