小説と内面の理解

 『ノベルアップ+』という投稿サイトがはじまりました。
 こちらで小説を書いております。
 作品はこちら。

novelup.plus

 

 さて、先日このような日記をアップしましたが……。

s-mizuki.hatenablog.com

 

ここで「作家がライフスタイルをまるごと提供することによってコミュニティを作る」ということを提案しました。ライフスタイル=内面の表現方法ととらえ、それを提示するというわけです。
 当然ながら、それを実際にノベルアップ+でやってみよう、というわけです。
 問題は、ノベルアップ+でコラムを書くと焦点が定まりにくくなってしまうこと。ですので、コラム部分は主にこちらでやっていこうかと思います。

 まずは簡単に「内面の表現方法って?」ということについて触れていきましょう。
 内面の表現方法とは、自分の考えを言語化し、他人に伝えていくことです。いちばん簡単なもので感情表現があると思いますが、それにしても容易にできるとは言えません。
 学校でも職場でも、他人に対して何かをアピールすることは容易ではなく、それが上手な人など、それほどはいないことでしょう。コミュニティに参加することでそれが磨かれるというのはわかりますが、私などもそうであるように「コミュニティに参加するためのコミュニケーション能力がない」という状態に陥りがちですし、他者と積極的に交流すること自体を嫌っている人も多いことでしょう。

 そこで、まずしなければならないのは、好きなものを評価していくこと、です。
 SNSにも多数問題はありますが「RT」や「いいね。」はかなりの発明です。好きなものを評価するのにややこしいことをする必要はありません。まずは反射的に「RT」「いいね。」をしてから、数日後、それを自己分析していきましょう(もちろんSNSはなんでもかまいません)。
 自己分析の方法は「RT」や「いいね。」から共通項を探し出すこと。ざっと見るだけでも大体の傾向が見えてきます。
 そこで見えてくるものが内面、というわけです。
 ただ、それがはっきりわかる人というのは少数派です。風景や猫の写真ばかりで自分が何を好きなのかわからない、というのが大半のケース。
 そこで補助線になってくれるのが「小説」なのです。

 小説に対しての「好き」は、ほんの少しだけ内面に迫ってくれます。ベストセラー小説は好きな人も多いですが、いくつか読めば、どうにも向いていないと感じるものだってあるはず。少なくとも誰もが好きな猫の写真よりは、好き嫌いがはっきり見えるはずです。

 今回の話をまとめると、「コミュニケートのために内面を知る必要がある。内面を知るには小説の好き嫌いが早い」。ということになります。
 次回は、小説の読み方を改めて書いていくことになるでしょう。

ノベルアップ+にて連載開始!

小説投稿サイト『ノベルアップ+』にて新作小説をはじめました!
楽しいクトゥルフものでございます!
TRPG好きな人もシナリオの一部に組み込んだりできる連作短編!
実話怪談や心霊映像ドキュメンタリーのテイストも入っております!
正気度を下げて健康に生きよう!
novelup.plus
ノベルアップ+は登録すると小説に対して応援スタンプが貼り付けられます。これが意外なほどに楽しい機能なので、バリバリ貼り付けたってください!
現状では順位も高め。一緒に作品を大きく広げていきましょう!

『道化か毒か錬金術2』続報

6月1日発売『道化か毒か錬金術2』!

道化か毒か錬金術2 (HJ文庫)
 

  現代で魔術がある世界となっている本作、明かされる特色は「異世界の強力な魔術的存在が人間の信仰を調べ、自身の特徴に近い神や悪魔、妖精などと名乗り、人間と取引している」というもの。「俺、すごい力ある乱暴者だけど、人間からパワーをもらいたいから嵐の神と名乗って信仰してもらおう」などとやっているわけです。

 自分の興味対象として「信仰ってなんだろう?」というのがあり、神が実在で不完全なものだった場合どうなるのか? なんてことを少し考えてみました。

 もちろん、固い話ばかりでなく、基本はスッキリ楽しいエンタメ。さらには今回は陰謀劇&前巻での疑問点や伏線はバリバリ回収されていきます。ロサ・モレッティもマルレーン・ビーケンも再登場。ガッツリとかかわってきます。

 新キャラクターは名前だけ登場していた皇帝に、真顔を崩さぬ少しズレたショタ! どんな活躍になるか期待してお待ち下さいませ。

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フエ星人から本作の説明を受けるころねさん。

道化か毒か錬金術2!

6月1日発売『道化か毒か錬金術2』の紹介です。

 

道化か毒か錬金術2 (HJ文庫)
 

  表紙は今回もお洒落。

 さて、前巻のギャグ寄りコメディとめちゃくちゃな自由さは崩さず、今回はアクション巨編となっております。洋画っぽさはより強くなり、欧州各地を飛び回ることに。よってパスティーシュ感はスパイ映画分も強めになっておりまして、Netflix等で『ボーン・アイデンティティ』を見ておくと笑えます。

 今回も概念的になったり前衛小説になったりはしないエンタメですが、長編だけにちょっとだけ重め。キャラクターの印象や関係性の変化を描くためのものです。楽しんでくださいませ。他に世界情勢成分もちょこっと強化。今回はウクライナ。あらかじめ概要を知っておくと楽しいです。

 さらには、どこが今の世界と違うのかという世界観も全容がわかります。そのあたりは次の日記で!

動員の言葉

 ときどき小説の読み方について書いている本ブログ、今回は前々から言っていた「動員の言葉」について書こうかと思っています。

 「動員」とは、狭義には「戦争のために人員を組織化すること」を指しますが、現在では「ある方向へ多数の人や物を集めて動かすこと」全般として使われています。観客動員、とかですね。

 「動員の言葉」は、私が考えた用語で、昨今目立ってきた政治言説や、売上のみを重視する言説、あるいは説教をしてくる漫画家自身が主人公としか思えない漫画などを見て、それらに共通する特徴があることに気づいたことから思いついた言葉です。

 その特徴とはもちろん「扇動すること」です。政治言説は《首相くたばれ》や《某新聞は馬鹿》程度のものを左右どちらの陣営においても最も最底辺のものとしますが、いずれにせよ「他人の同意の確認」と「同意者を増やしたい」という意図が含まれます。物を売りたいとか説教漫画においても、社会を良くしたいと意図して発せられた言葉にもかかわらず違和感を拭えないのは、無意識のうちに扇動しようとしているから、です。上から目線であるから、とか、鬱陶しいから、とかは扇動者を見たときの感想であるわけです。

 では、その言語的な特徴はなにか? それはもちろん、扇動者、攻撃対象、行動指示、が含まれていることです。《(発言者)「(攻撃対象)は○○の特徴を持つ。そのため(行動指示)しよう」》と要約できるなら、それは「動員の言葉」であり「動員の文法」が使用されているというわけです。

 無意識のうちにこの「動員の言葉」を口にしている場合、次のケースが考えられます。

    • とくに言うべきことがないのに発言しようとしている
    • 自分も動員されている

 どちらのケースも悲劇です。ツイートやブログに「動員の言葉」を連投していたら、このふたつを疑った方がいいでしょう。「動員の言葉」は、公共の場で発言せよ、と指示されたとき、もっとも口にしやすい言葉です。そのため言うべきことがない人が発言しやすいのです。さらに、それらの攻撃対象が政治体制や権力であったとき、同意してくるのは発言者に扇動された人でなく、扇動者そのものです。「そうだ!」の声を期待しての発言、あるいは本当に「そうだ!」の声が動員の言葉に対して返ってきたなら……気をつけないといけません。あなたは指揮官でなく、兵士なのかもしれません。

 

 で、残念ながらこの文章も「そうだ!」の声を期待して書かれています。そして、悪質なことに、上記とは無関係な本を売ろうとしています。数日中にまた宣伝しますが、いろいろグダグダ言っている作者の本、もうすぐ発売です。動員されて買ってね!

 

道化か毒か錬金術 2 (HJ文庫)

道化か毒か錬金術 2 (HJ文庫)

 

 

グローランサ!

令和もゲームするぞ! ってなわけで、特別に未翻訳のゲームをプレイする機会にめぐまれました。そのゲームは『グローランサ:ザ・ゴッズウォー』!

boardgamegeek.com

本作は『クトゥルフ・ウォーズ』のメーカーが作った同じタイプのゲームで、基本は陣取りゲーながら、大型フィギュアとキャラクター性重視のゲーム性がウリとなっています。大型フィギュアがどのくらいでかいかというと……。

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でかい。

世界観は名作TRPGルーンクエスト』のグローランサ世界。神話の神々が殴り合います。英雄も神々も地獄だろうが天国だろうが海だろうがフラフラ移動し、死んでもカジュアルに復活します。

ストーリーは神話なので、太陽神がうっかり死んで地獄へ行ってしまい「地獄が明るくなってやってらんねぇ!」と暗黒の勢力が地上に逃げてくるところからスタートです。ですが、神々の敵は暗黒でなく、その隙にどっかからやってきた混沌。混沌の渦が開いたり閉じたりするんで、それを皆でなんとかしようというお話。しかし神話を語り継いできたのは各勢力の信徒たちなので「いや混沌はウチの神だけがなんとかしたんで、他はサボってたよ」と各自主張しているという次第。じゃあ真実はどうだったの? 続きはゲームで! という壮大なプレイフィールが楽しめます。

自分は「月」をプレイ。同じ世界感を持つファンタジーシミュレーション『ドラゴンパス』で「ルナー帝国」だった奴らですな。

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女神がイカすぜ。

特徴は「月の満ち欠け」で最強から最弱まで変化する戦闘力と、他の神々より後発の勢力のため奴隷制などを利用していること。

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独自ルールの塊のボード

全員が初プレイだったため、どういうゲームか手探りだったのですが、勢力独自のルールが満載だったため、いわゆる定跡が存在し、全員がそれを外してしまうという感じでした。これは二度プレイすべきゲームという感想で一致。

ちなみにプレイ後に気づいた月の定跡は早いウチに「セデーニャの『月経』能力でセレーネを全部召喚し、月齢を一周させ、4アクション使うものの、セレーネでゲットできる3パワーにより、実質1パワーでルーンを得る」というもの。初回でわかるか、そんなもん!

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壮大な世界を感じられるボード

しかし、実は練られたゲームバランスと、贅沢なコンポーネントでアガること請け合い! ケチをつけるところはほとんどありません。定跡があることも、「上達の余地があるので複数回プレイできる」と考えれば、なんの問題もありません。

難点はふたつ。「ラストの勝敗にカタルシスがない」ことと「高価&日本での入手困難」というところでしょう。プレイに広い場所が必要なのは、まぁ別として……。

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ラストバトルだ全員集合

拡張を含めると二桁万円くらいいくらしいけど、プレイする機会があったら逃すんじゃない! とだけ今回の記事では書いておこうかと思います。

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にぎやかになった盤上

 

小説サイト乱立時代とこれから

 小説投稿のサイトが増え、世間(というか主に運営側)で叫ばれることは「死にかけた出版業界の再生を」や「異世界転生ばかりではない小説の多様性を」等なのですが、それに全面的に賛成している人は少数であろうことは市場が証明しています。たとえ「ユーザー(読者&作家)を大事にする」姿勢を示そうとも、何も起きないままでしょう。

 小説の投稿しやすさも読みやすさも、それによって生じる恩恵も、最終的に市場の拡大が目的であるならば、いわゆるコモディティ化を後押しする要素にしかなりません。結果として個性の無いサイトが並立し、多様性すら実現は不可能であることは誰でも予想できることでしょう。小説投稿サイトは、そのサイト内に読者を拘束することを是とします。それは悪ではないのですが、映画配信サイトの抱える問題の縮小版(つまりより悪い!)として「共通言語としての小説」が失われることが起こります。

 では「共通言語としての小説」が失われることの何が悪いのか? それは「レアではあるが確かに存在する人間の思考パターンが多数の人に知られなくなる」ことが起こるからです。生活している上で役に立たない思考や、隠しておくべき事柄などは、物語の形でしか認識されません。小説は低コストであるがゆえに近代ではパーソナルな物語を扱うことが可能なジャンルでしたが(国民小説のような機能は映画やテレビへ移行したこともあり)、それらが人々の目につかないところに行ってしまうのは損失でしょう。

 現状では、多くの出版人が国民小説を取り戻そうとしているようにしか見えず、投稿サイトもそのように使おうとしているようです。売れる小説をメディアミックスし、それによって「良心的な(出版人はそう思っているであろうという意味で)」作品を出版する。そのモデルが衰退しているのにそれを行おうとしているのは狂気ですし、なにより、そのスタイルが「売れる作品」に対して侮蔑的であることが、ライトノベルと文学の軋轢として表面化した歴史があります。

 では、それにどう抵抗したらいいのか? 「作家がパーソナルな内面を作品として提示し、そのサイト内でライフスタイルのモデルをまるごと提供する」ことにより、作家と読者のコミュニティを作ることが解決策であると私は考えます。作家個人が、読者に対し、いかに内面を表現したら良いかを示すことこそ、小説が生き残っていく鍵になるのだと思います。現状の「お文学」についての愚痴は、まぁ書かないでおくのがよいでしょう。