動員の言葉

 ときどき小説の読み方について書いている本ブログ、今回は前々から言っていた「動員の言葉」について書こうかと思っています。

 「動員」とは、狭義には「戦争のために人員を組織化すること」を指しますが、現在では「ある方向へ多数の人や物を集めて動かすこと」全般として使われています。観客動員、とかですね。

 「動員の言葉」は、私が考えた用語で、昨今目立ってきた政治言説や、売上のみを重視する言説、あるいは説教をしてくる漫画家自身が主人公としか思えない漫画などを見て、それらに共通する特徴があることに気づいたことから思いついた言葉です。

 その特徴とはもちろん「扇動すること」です。政治言説は《首相くたばれ》や《某新聞は馬鹿》程度のものを左右どちらの陣営においても最も最底辺のものとしますが、いずれにせよ「他人の同意の確認」と「同意者を増やしたい」という意図が含まれます。物を売りたいとか説教漫画においても、社会を良くしたいと意図して発せられた言葉にもかかわらず違和感を拭えないのは、無意識のうちに扇動しようとしているから、です。上から目線であるから、とか、鬱陶しいから、とかは扇動者を見たときの感想であるわけです。

 では、その言語的な特徴はなにか? それはもちろん、扇動者、攻撃対象、行動指示、が含まれていることです。《(発言者)「(攻撃対象)は○○の特徴を持つ。そのため(行動指示)しよう」》と要約できるなら、それは「動員の言葉」であり「動員の文法」が使用されているというわけです。

 無意識のうちにこの「動員の言葉」を口にしている場合、次のケースが考えられます。

    • とくに言うべきことがないのに発言しようとしている
    • 自分も動員されている

 どちらのケースも悲劇です。ツイートやブログに「動員の言葉」を連投していたら、このふたつを疑った方がいいでしょう。「動員の言葉」は、公共の場で発言せよ、と指示されたとき、もっとも口にしやすい言葉です。そのため言うべきことがない人が発言しやすいのです。さらに、それらの攻撃対象が政治体制や権力であったとき、同意してくるのは発言者に扇動された人でなく、扇動者そのものです。「そうだ!」の声を期待しての発言、あるいは本当に「そうだ!」の声が動員の言葉に対して返ってきたなら……気をつけないといけません。あなたは指揮官でなく、兵士なのかもしれません。

 

 で、残念ながらこの文章も「そうだ!」の声を期待して書かれています。そして、悪質なことに、上記とは無関係な本を売ろうとしています。数日中にまた宣伝しますが、いろいろグダグダ言っている作者の本、もうすぐ発売です。動員されて買ってね!

 

道化か毒か錬金術 2 (HJ文庫)

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