T.I.M.E ストーリーズをプレイ

いやー、今回は『T.I.M.E ストーリーズ』のスタートセットをプレイしたのですが、記事については書き方を迷っています。個人的に、というか、いつもプレイしている仲間全体で意見が一致していまして……。

「我々には合わない」

つまり、まぁ、自信を持ってオススメできないというわけです。

ですが、合わない我々にも伝わった面白い要素は多く、その人気からシナリオも多数出ています。バッチリ楽しめる人も確実にいるので、購入をお考えの方が参考にするべき良点を最初に、それに続いて欠点を書くということにします。購入をお考えの方は良点でお引き返しを。

 

第一の良点「マスター不在でTRPGが楽しめる!」

ゲームシステムは詳しく明記しませんが(ネタバレ厳禁のゲームなので)、四人で複雑なゲームブックを解いていく感じ、というのが一番近いでしょう。TRPGはマスターの負担が多くてプレイから遠ざかりがちというサークルは試してみる価値ありです。

 

第二の良点「ビジュアルが豪華」

カードを並べてイラストが出来上がるというシステムは画期的です。冒頭だけ貼ると、こんな感じ。

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左端がなにひとつ説明しないおじさん。

 

さて、ここからは欠点……というか、合わない人はトコトン合わないだろうな、というところです。

 

第一の欠点「ゴールがわからない……」

シナリオが複雑なのはいいのですが、ゴールが提示されないのは困り物。途中で裏切られてもいいので、当座の目標は設けてほしかったです。というのも、総当たりで一回目は失敗させるバランスになっているため、露骨なトラップを回避する理由がないのです。

 

第二の欠点「要するに全部見ればいいのね」

上記欠点と、シナリオのオチが説明されないことにより、スルーしてしまった部分を推測することは不可能です。それなのに謎解き要素が最終関門であるため二度目のプレイをするのは面白くありません。なので三回目(○度目でないのです)の挑戦くらいで「途中全部パスしようぜ……」となり、いきおい、解こうが解くまいがある程度シナリオを終えたなら、ルールを無視して全部を見てしまうことになります。

 

第三の欠点「謎解きが世界観準拠ではない」

謎解きがハイライトになるシナリオのため、ネタバレは厳禁なのですが、それでも書かずにはいられないのが謎解きのバランスです。推理小説を読んでいたら、キャラクターが物語内の設定を一切使わず「この文庫を50ページごとにめくり、その頭文字を拾ったら犯人がわかったんだ」と言い出す、という感覚に近いものになっています。ぶっちゃけ、“解けなかったら頭が悪いと思われてしまうので他人に話しにくい”ことを悪用して批判をし辛くした制作側の陰謀ではないかと疑いたくなります。いや、頭が良い人ほど世界観を守って考えてしまうので、解けないですよ、これ。とはいえ、よく遊園地のイベントなどで行われるいわゆる『脱出ゲーム』の理不尽さに慣れている方は大丈夫かもしれません。

 

そんなわけで、我々には合わなかったこの作品ですが、その欠点を知っても「面白そう!」と思う方か、「システムをパクったら面白いマスター不在のTRPGが作れるぞ!」という気持ちになった方には非常にオススメできます。コンポーネントとシステムはグッドなので。

次回は楽しめたゲームを紹介しますね。

その他ボードゲームの2

『タイムボム』

手軽にプレイできる正体隠匿系(人狼みたいなの)ゲーム。タイトルに「タイム」が入っているのは時限爆弾と時空警察の両方の意味があるのだけど、なんで時空警察かは謎。というかこの新版ではイラスト326(ミツルと読むアレ)のため、フレーバーが邪魔過ぎる。プレイしながらイラストの悪口というゲームはどうなのか。「ソロプレイ用の相棒」と銘打ったキャラクターが結構な大判の厚紙ポップで封入されているのだが、「ムカつくから見せるな」と撤去。ボム以前に地雷が発見されたという次第。

 

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ゲームそのものは面白いぞ。

 

プレイの細かい内容は省くが、カジュアルに楽しめるパーティーゲーム。勝敗にも後腐れはない。ただ二回以上プレイすると、セオリーを通り越して「それしかない」やり方が見えてしまう。上級ルールもあるので、その点は製作者もわかっている模様。ただ、ほぼ正体がわかっても最後が二択になるゲーム性は欠点でなく良点。

 

『凶星のデストラップ』

タイトルからしてバカっぽいものの、これはB級映画を意識したもので、英語タイトルは『NOT ALONE』。「不時着した宇宙飛行士たちを地元惑星のエイリアンが体内に同化していく!」というストーリーなのだ。

 

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救難信号が届くまでとエイリアンに同化された度合いが左右からゴールに向かうマーカーで示されるのだ。

 

特色はエイリアン役のプレイヤーが存在すること。一人が悪役で「全員を取り込むぞー!」と頑張るのです。

 

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カード化されている場所を指定して同化!

 

エイリアンと遭難者たちは活動場所をマーカーとカードで指定。もしばっちり出会ってしまったら少しずつ同化されていく。

この少しずつ同化というのが面白いところで、プレイヤーは3が与えられている精神点を削られていくのだ。精神点が減るとカード(移動先)を回収できなくなり、次にどこに行くかがエイリアンにばっちり知られてしまう。なおプレイヤーが死ぬと、カードを回収して精神点も復活。つまり、別のキャラクターになるというシステム。最後まで参加できるので仲間はずれにもならないし、特定のプレイヤーの行動を読みまくるエイリアンというプレイもあり得る。

バランスは当然ながらエイリアン不利。難度を上げてエイリアン有利にするオプションも用意されているが、オススメは勝手にTRPG風にしてしまうプレイスタイル。プレイヤー間の話し合いはエイリアンに筒抜けにしなければならないというルールがあるので、1~2ターン程度は露骨に役割分担をして「まさか俺たちの会話はエイリアンに伝わっているのか……?」とか同化されて「そうか! 宇宙とは……ゲッターとは……」とゲッターロボごっこを始めるなど会話ゲーにするのが楽しいかと。

というか、勝ちを目指すと、会話せずに黙々とカードを置くゲームになるんですねぇ、これが……。そこが欠点といえば欠点なのかと。

人数多めでもなんとかなるところも含めて割とオススメです。

 

凶星のデストラップ 完全日本語版

凶星のデストラップ 完全日本語版

 

 

その他ボードゲームの1

サクッと重くないボードゲームをいくつかプレイした話など。

『ラブレター』

まずは『ラブレター』。言わずとしれた名作。最低限のカードで面白さを生み出しているのがすごいところ。やりこみ要素はないものの、カード当ての快感が気軽に味わえます。

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これしかカードはないのだ。

 

展開しているカードから相手の手札を推測し記憶しておくというボードゲームの基本要素を学ぶにも最適です。

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プレイスペースもそんなにいらない。

 

『マンハッタン』

続いて『マンハッタン』。世界にビルを建てていくという妙なテーマのゲーム。ポイントは使用カードの意味がプレイヤーによって変わるところ。カードに記されたマス目をボードに対して正面に読み取るため、プレイヤーの座る位置で九十度ずつズレていくのだ!

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奥に見えるカードの位置にビルを置ける。

このゲームのもうひとつのポイントは、見ての通りホントにビルを積み上げること。高さが見てわかる! それだけで楽しいのです。

そんなわけでガチで勝ちに行くゲームではないのですが、「手札は使うカードより殺すカードをキープ」「ラウンドごとの点数が開かないようにプレイ」「スタートプレイヤーが巡回するゲームだが最初の三番手プレイヤーが有利」あたりが勝ち筋ですね。

テラフォーミング・マーズをプレイしました!

 プレイしましたよ噂の『テラフォーミング・マーズ』! いやー、素晴らしいゲームで、すっかり次のプレイをしたくなっております。噂では『テラフォーミング・マーズ』のみをグルグル回しているサークルも存在するらしく、「まだ十一回しかプレイしていないのですが」という素晴らしい言葉を他のブログでも見ることができました。

 

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火星のすがた

 

 私なんぞはまだ未プレイにも等しいですが、集めた情報から攻略のとっかかりを掴むことができましたので、「イマイチ楽しくプレイできないなぁ」と感じている方のために書いておこうかと思います。解説や企業毎の攻略などは検索するといくつも見つかりますので、そちらを御覧ください。

 

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めっさある企業たち

 

 で、これは何をするゲームなのか? が意外と気づきにくいポイント。言い切ってしまえば「ゲーム終了時に勝利点を一番多く持っておく」ゲーム。当たり前じゃないかと思われるでしょうが、さにあらず。この『テラフォーミング・マーズ』、ゲームの終了条件を満たしたターン(世代)で終了するため、どのタイミングで終了させるかはプレイヤーの駆け引き次第なのです! おまけに非公開情報は手持ちのカードのみ。勝利点はカウントしにくいものの全員が知っています! しかもクレジットが保つ限りターンは終了しません! すげぇ熱いですね。

 

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クレジットなどはメッキされたキューブで示されているのだ。

 

 さらにボード上に展開されるTR(テラフォーミングレート)は地球化の貢献度によって上昇するものの、一定以上の貢献はポイントを生み出さない有限なりソースです。プレイヤーは有限なものを奪い合っているわけで、序盤から他社にリードを許してしまうと逆転は難しくなります。

 

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盤面が進んでいくとこうなる。まだ勝手がわからないので、こんなんは過疎すぎるっぽいぞ。

 

 TRが勝利ポイントでもあるシステムは、つまりこのように考えることができます。「何クレジットが1勝利ポイントに換算できるか?」。標準プロジェクトのクレジットを基準にすれば、カードによりプロジェクトと同等の効果を発揮した方が得なのがわかってもらえると思いますが、そうなると悩ましいのが「生産量を増大させるアクション」の存在ですね! 例えば発電量の増大は標準プロジェクトでは11ですが、カードでは6。とはいえ、カード購入に3かかっていますので、得は2クレジットと簡単に計算できますが、考えなければならないのは、「増大した生産量の恩恵を何ターンにわたって受けられるか?」の方なのです。発熱量の増大は初期に実行できれば残り温度のターン数分のTR(1/8)に変換できますが、ゲーム中期であれば別の方法で勝利点を獲得する方に金額を回さないと損をするような数値設定になっています(排熱をクレジットに変換できるヘリオンでも実質損!)。いかにゲーム終了時をコントロールするか? その思惑のスキを突いていかに予想できない勝利点を掠め取っていくか? 本作のシステムはそういう楽しさを産みだしています。

 

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カードが並ぶだけで面白い。

 

 カードは拡張も入れるとめちゃくちゃな量になるのですが、がっつり記憶して奇跡のコンボや「ここしかない!」という使用タイミングを見つけていきましょう。どこまでも潜れるめちゃくちゃ深いゲームですよ! ここまでの重ゲームでは久々の大ヒットではないでしょうか。SF好きにもTCG好きにもソロプレイ好きにもオススメです!

 

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カードはこんくらいの山に! 

 

テラフォーミング・マーズ 完全日本語版

テラフォーミング・マーズ 完全日本語版

 

 

 

『ブリタニア』をプレイ

こちらマップです。f:id:S_Mizuki:20180902131601j:plain

 今回プレイしたのは『ブリタニア』。別版も出ているようですが元祖のアバロンヒル版です1986年のゲーム。ずいぶん昔の制作なのですが、意外に古さは感じませんでした。
 
 タイトルとマップからわかるように、ブリテン島が舞台。ローマの侵攻からノルマン・コンクエストまでの歴史を辿っていく(といいつつ民族同士が殺し合う)ものになっております。
 
 特色はプレイヤーの担当する民族がひとつではないこと。時代を経て消滅、あるいは登場する民族があるため、一時代に支配的だった民族の担当者はその他の時代は傍流となってしまった民族を同時に担当するという具合。勝利条件はポイント制ですが、ターン毎に計算するため、その経過はかなり凸凹。民族のポイントでなくプレイヤーが獲得したポイントは最終的にバランスがとれている、という構造となっています。
 『スモールワールド』に似てるかも、と思った方はそのとおりで、このシステムを採用したゲームを時代をさかのぼって列挙すると『スモールワールド』『ヴィンチ』『ヒストリー・オブ・ザ・ワールド』『マハラジャ』『ブリタニア』となっております。
 
 『ブリタニア』のプレイ自体は簡単。エリアにコマを進めて土地を確保、コマ同士がぶつかるとダイスを振って戦闘、負けた側のコマが消えるというだけ! ただし民族ごとに指定されたエリアでポイントが入るため、自然と史実通りの支配地域にならざるを得ないという構造になっています。

侵攻していくローマ!f:id:S_Mizuki:20180902131717j:plain

 民族ごとの特殊ルールが多く、例えばローマ人は戦闘が強いものの序盤で消え去ります。ゲルマン民族大移動に対応するため本国に帰るのです! そしてデーン人に追い出されたアングル人、サクソン人、ジュート人が上陸してくるという具合。ゲーム的なバランスより史実優先らしいのですが、ブリテンの歴史と地理に詳しくないとどのくらい正確なのかはよくわかりません! 当然、我々は詳しくない方なので「どういうこと……」となるシーンが多々ありました。アイルランド人とダブリナーズ(アイルランドのデーン人)がそれぞれ別のプレイヤー担当として散発的に攻めてきたり、ヴァイキングがデーン人、ノルウェー人、ノース人に分かれていたりと、実際の侵攻がそうだったのか、ゲームの都合なのか調べてみたくなるところではあります。

ピンぼけアーサー。なお瀕死。f:id:S_Mizuki:20180902131620j:plain

 なお日本で女体化されたり欧州で神格化されているアーサー王はローマン・ブリトン人(ローマ化されたケルト人)として登場。戦闘で無双した挙げ句、あっさりと滅びます。このゲーム、民族同化などルールにない! すべて優勢な民族に吸収されて滅ぶのです。
 
 このように決められた通りに進行していくため、退屈感があるのではないかと思われるこのゲームですが、まるでそんなことはなく、そこが独特のプレイ感につながっています。決められた通りにプレイしないと勝ちにつながらないのですが、その余剰として行った(あるいは行わなかった)ちょっとしたことで後の展開が大きく変わることがあるようで、そこが実に歴史を感じさせてくれます。ローマ人がウェールズ人をもっと追い込んだなら、とか、サクソン人がノルマン人に抵抗できたなら、とか諸々あることは初回プレイでも感じられました。
 
 一方で「古いゲームだな」と感じてしまったのは、戦闘解決がダイスであること。基本6が出たら殺せるみたいなアバウトさなので、頻繁に生じる一対一戦闘が理不尽な運に左右されます。今回のゲームではアイルランド人がほぼ何もできずに終了する(そういうバランス設定ではあるのですが)とか相手の二倍以上の余剰人口が出ないと隣国に攻めるのが運ゲー(こちらはバランス的に攻めなければならない)などがありました。
 とはいえ、大きな不満点はそのくらいで、強いて言えば民族ごとの特別ルールが多く間違えやすい、というくらいですが、そこも味なので、不満は少ない良作といえるでしょう。
 
 ちなみに、このタイプのゲームでは『ヴィンチ』と『スモールワールド』では戦闘が改善されていますが、そちらは歴史再現感がないため、本作は代替物のない面白さを持っていると言えるでしょう。
 
 なお『スモールワールド』は、このタイプのゲームの決定版で、戦闘が運になる部分が非常に少ないのですが、そのため実は自ターン開始時には「完全解がある!」ゲームなのです。簡単な例としては「侵入したそのターンに次プレイヤーから絶対に滅ぼされる種族が出てしまう(そのため滅ぼされる種族を選ぶのはダメなプレイ)」などが起こり得るため、上手なプレイヤーが勝つゲームとなっています。
 
 時代が進んだ結果、ガチプレイに至ってしまうというのは皮肉というか、なんというか。このように『ブリタニア』は、対立プレイでありながら協力プレイ、とでもいうべき不思議なテイストの和気藹々と楽しめる良作でした。わざわざ古いゲームをするだけの価値はあるでしょう。おすすめです。

 間が空くのもなんなので、さくっとエッセイ的に。

 
 個人的に昨今の困りごとは「わかってしまう」ことなのだと思っていて、それはどういうことかというと、例えば『どうぶつしょうぎ』というゲームがあるわけですが、これをプレイするより前に「完全解があるよ!」という情報に行き当たってしまう、というようなことです(なお後手必勝)。
 これは煎じ詰めれば、二マス上下「歩」のみの将棋が先手必勝で、三マス上下「歩」のみが後手必勝とでもいうようなもので、まぁ、うまく言えませんが、そういう「わかってしまう」が世の中には、ある。オセロは終盤近くの二手くらいのみ判明しておらず、チェスも遠からず完全解が……とか、「判明したとて、将棋盤を拡大すればよい」と将棋の羽生さんが言ったとか、まぁ余談はあるわけですが、ともかく、そのような。
 
 これがネットの普及のせいであるとか、そういう分析は別として、問題と思っているのは「最前線以外は価値がないと感じられてしまう」ことです。まぁ自分の内面だけの問題ならいいんですが、『どうぶつしょうぎ』なら、「真剣にどうぶつしょうぎプレイしています!」というブログって成立します? ってな感じです(実際『どうぶつしょうぎ』はコマが増えていきます)。
 
 この感じをどうすればいいのか? そしてそれがゲーム以外の分野にも適応できることなのか? そして、自分の興味の範囲である小説にも「最前線以外に価値がない感覚」が響いてはいないか? あたりが現在の悩みどころです。そこから主語を大きくして政治問題やなろう小説のゲーム性うんぬんについて話を持っていくこともできますが、陳腐なのでやめておきましょう(こういう態度も「わかってしまう」感じなのですが)。