『へレディタリー/継承』

なんか間も空いたし、映画の感想でも書きますかねってなわけで、『へレディタリー/継承』でございます。ネタバレありになるんで、予告を貼りつつ、少し行をとります。


【超恐怖】これが現代ホラーの頂点 11.30公開『ヘレディタリー/継承』90秒本予告

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい。

この文を書いておこうと思ったのは、「なんや、これ。怖くないし、わけわからん」という感想をいくつか見たからです。「あの展開だから、そりゃあなぁ」と思う一方、見方を解説されれば「面白い!」に反転する人もいるかもしれないと思ったからです。

本映画についての考察はすでに他のブログでいくつも読むことができます。電柱にマークがあること。信者たちが最初の葬式に登場していること。それらの本筋を明快にする解説など参考になるものも多いです。ですが、ここではそれが理解できたところで「だからどうした。つまらんことに変わりはない」と思ってしまった人に向けてということになります。

結論から書いてしまえば、この映画は「『エクソシスト』シリーズへのアンサーとして見よ!」となります。オマージュシーンも多く、特にガラスを突き破るシーン、ハサミを使うシーン、天井に貼り付いているシーンは明確です。ってか、主に『エクソシスト3』ですね。

ただオマージュに気づいたからって面白くなるはずもありません。『へレディタリー』は『エクソシスト』が語ろうとして上手く行っていないテーマを語り直したところにポイントがあります。それは「ひでぇ現実より悪魔信仰とかオカルトパワーとかの方が良いよね!」というメッセージです。

エクソシスト』では執拗に神の不在が描かれるものの最終的に信仰が勝利しています。1では曖昧に描かれた信仰の勝利ですが、3では作り手が別人になったため、ホラー表現としては秀逸だったものの信仰の勝利はより明確になっています。

『へレディタリー』はそれに「ノー!」を強く突きつけます。素直に見た場合、悪魔側の完全勝利のストーリーですし、他の解釈をした場合でも(完全に妄想、あるいはピーターは生きている等)現実から逃避して終わる構造になっていますね。

だから「怖くない」と思ってしまった人は、実は十全にメッセージを受け取ってしまった人でもあるのです。金銭的に恵まれながらも不全感しかない家庭、アレルギー、俗っぽいだけで逃避先にすらならないパーティー、不良的というにも足りない大麻、無信仰、とどめに本当に無意味な死。それらのすべてに意味を与えてくれるのが、実は悪魔の計画だった、というストーリーです。それにより、つまらない死や不幸が必然として輝きを放つ……。本物の超常現象がはじまってからラストまでは、救済の物語として微笑みとともに安心して見るのも正しい見方のひとつと言えるでしょう。

とりあえず、面白くなかったという人のために、でした。